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熟睡感のある睡眠をとることができていますか?
睡眠の大切さを頭では分かっていても、実際には、忙しさや寝る時間がもったいないからと、睡眠時間を削ってはいないでしょうか?
睡眠の質が低下すると、筋トレにさまざまな悪影響を与えることが、数多くの研究で分かっています。
睡眠は筋肉の回復、成長、パフォーマンスと密接に関わっています。
睡眠不足や質の低下は、筋トレの効果を下げてしまい、怪我のリスクを上げることになります。
今回は、睡眠の質が下がると筋トレにどのような影響があるか、研究論文をもと解説します。
- 睡眠の質の低下が筋トレに及ぼす悪影響
- 筋力低下やモチベーションの低下を招く
- 回復が遅れ、怪我のリスクが高くなる
- 太りやすくなる
1.睡眠不足は筋力の低下を招く
2017年に発表されたマクマスター大学の研究によると、睡眠不足は筋力トレーニングの効果を大幅に低下させてしまうことが分かっています。
この研究では、1週間のあいだ被験者の睡眠時間を4時間に制限しました。
その結果、被験者は筋力の低下やパフォーマンスの低下がみられました。
特に、ウェイトトレーニングにおける持続力が大幅に減少したそうです。
睡眠不足が続くと、運動中の筋肉の酸素が効率的に運ばれなくなります。
結果として、筋力や持久力が低下してしまいます。
研究では、1週間の睡眠不足でベンチプレスやスクワットの最大重量が減少し、持久力のテストのタイムも悪化することが報告されました。
その他にも、睡眠不足が筋肉のエネルギー消費効率に悪影響を及ぼすことも分かっています。
睡眠不足によって、筋肉に蓄えられるグリコーゲン(エネルギー源)の量が減少し、運動中にエネルギー消費が進み、持久力の低下を招くことにもなります。
睡眠不足が続くと筋肉の分解と合成の比率が分解の方に傾くため、筋肉量の維持が難しくなり、筋トレの効果が減少してしまうのです。
2.睡眠不足によって筋肉の回復力が低下する
2011年の米国スポーツ医学会誌に掲載された研究によると、
・睡眠不足は筋肉の回復速度を遅らせる
・トレーニング後の筋肉痛(DOMS:遅発性筋肉痛)を長引かせる
としています。
睡眠中に分泌される成長ホルモンやテストステロンは、筋肉の修復とリカバリーに不可欠です。
睡眠不足によって成長ホルモンの分泌が減少すると、筋肉の回復が遅れることになってしまいます。
筋肉の回復が遅れると、次のトレーニングの際に最大限の力を発揮できなくなるため、結果としてトレーニングのパフォーマンスが下がってしまいます。
睡眠中の、特に深い睡眠の際に成長ホルモンが分泌され、筋肉の成長と回復が促されます。
しかし睡眠の質が低下すると成長ホルモンの分泌が減少し、筋肉の修復や成長が十分に行われないことが確認されています。
炎症反応の増加
2012年の「Brain, Behavior, and Immunity」誌の研究によると、睡眠の質が低下することによって、炎症性反応を促進する「炎症性サイトカイン」が増加します。
睡眠不足によって、慢性的な炎症が引き起こされてしまうことが分かっています。
睡眠不足によって、炎症性サイトカインが増加し、筋肉の修復が阻害されることで、筋肉の回復が遅れてしまいます。
また、筋肉痛が長引いたり、筋肉痛、関節痛の慢性化につながることも分かっています。
3.睡眠不足はホルモンバランスが乱れる
2010年のシカゴ大学の研究で、睡眠不足がテストステロンに大きな影響を与えることが確認されています。睡眠の質と、男性のテストステロンレベルに強い相関があるのです。
1週間の間、睡眠時間を5時間以下とした場合、テストステロンの分泌量が10~15%減少しました。
テストステロンは、筋肉の合成と回復を促進する重要なホルモンです。
そのテストステロンが減るということは、筋肉の合成量の低下につながります。
研究によるとテストステロンレベルによって疲労感や活力の低下も引き起こされると報告されています。
テストステロンの重要さを知りたい方は、こちらの記事にて解説しています。
また、睡眠不足はコルチゾールというストレスホルモンの増加を引き起こします。
このコルチゾールによって筋肉の分解が促進され、せっかくの筋トレの効果を減少させることになってしまいます。
4.睡眠不足で筋トレのパフォーマンスが低下する
2014年の米国スポーツ医学会誌に掲載された研究です。
・睡眠不足によって運動パフォーマンスが低下する
・特に、瞬発力や持久力が著しく低下する
この研究では、7時間未満の睡眠がパフォーマンスにマイナスの影響を与えたことを示しました。
具体的には、短距離走やウェイトリフティングなどのパワー系の運動において顕著に負の影響が現れています。
・ベンチプレスやスクワットの最大挙上重量が平均して20%低下
・持久力テストでは、平均10%以上のタイムの低下が見られました。
さらに筋力が必要とされる反復運動においても、疲労を感じるまでの時間が短くなり、全体的に悪影響があることが確認されました。
パフォーマンス低下の理由として、睡眠不足によって
・エネルギーの枯渇・・・睡眠不足によるエネルギー効率の低下
・ホルモンバランスの乱れ
・集中力と反応時間の遅延・・・睡眠不足による神経系の疲労により、集中力、瞬発力が発揮しづらくなる
睡眠不足による筋トレのパフォーマンスの低下は、以上のようなメカニズムにより引き起こされます。
5.寝不足によるトレーニングのモチベーションの低下
2016年に発表されたストックホルム大学の研究によると、睡眠の質が悪いとトレーニングに対するモチベーションが低下すると報告されています。
睡眠不足により前頭葉の機能が低下してしまい、意欲低下へと繋がります。
モチベーションの低下により、持続的にトレーニングを実行するのが難しくなるとのことです。
睡眠不足によって疲労感が増し、トレーニングへの取り組みが消極的になってしまうためだそうです。
睡眠不足は、メンタルへの影響も小さくありません。
睡眠時間が足りないことで、不安やストレスを増加させ、これがトレーニングに対する集中力や意欲を低下させてしまいます。
6.睡眠不足による体脂肪増加のリスク
2010年のアメリカ内分泌学会による研究では、睡眠不足が体脂肪の増加に寄与してしまうことが確認されました。
特に睡眠時間が6時間未満になると、食欲を調整するホルモンである、「レプチン」と「グレリン」のバランスが崩れてしまい、空腹感が増してしまいます。
強い空腹感から食事量が増え、摂取カロリーが増えることで体脂肪が増加することになります。
7.睡眠不足で怪我のリスク増加
睡眠不足によって怪我のリスクが大きく高まることは、2019年にアメリカ整形外科学会が発表しています。
1日6時間以下の睡眠をとるアスリートは、1日8時間以上の睡眠をとるアスリートと比べて怪我の発生率が1.7倍高くなっていたそうです。
睡眠不足によって集中力が低下し、フォームが乱れたり、反応速度が下がることで判断ミスを犯してしまい怪我のリスクが高まるそうです。
まとめ
筋トレで成果を出したいなら、睡眠の質を見直してみましょう。
質の良い睡眠は筋肉の成長やパフォーマンスに直結し、逆に睡眠不足は筋トレの効果を大きく損ないます。
- 筋力の低下
- 筋肉の回復力の低下
- ホルモンバランスの乱れ
- 筋トレのパフォーマンスが下がる
- モチベーションが下がる
- 体脂肪の増加するリスクが上がる
- 怪我のリスクが増加する
日本人は睡眠時間が先進諸国の中でダントツに短いと言われています。
睡眠不足は、筋トレにとって大敵です。
睡眠を甘くみないで、しっかり睡眠時間を確保しましょう。
自分に最適な睡眠時間を知りたい方は、『
筋トレに最適な睡眠時間を見つける方法【科学的アプローチ】』の記事を参考にして、もっとも効率的な睡眠時間を確保しましょう。
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